ヴィヴィアン・ガールズ、ウェイヴス…90年代初期のローファイ・ムーヴメントを想起させつつも、全く新しい感性が横溢するバンドたちを輩出し、一躍シーンのメッカとなったブルックリンの新進レーベル、ウッジスト。そのオーナーでもあるジェレミー・アールが率いるウッズは、もともとミネガーというパンク・バンドのメンバーだったジェレミーとクリスチャン・デロエックの2人による、フォーク寄りのサイド・プロジェクトとしてスタートしたものだ。ミネガーではそれぞれドラムとギターを担当していた彼らだが、ウッズでは互いに曲を持ち寄り、ヴォーカルも2人で分担。2005年にはジェレミーが主宰するカセット・テープ専門レーベルのファック・イット・テープスより、ファースト・アルバムとなるカセット2本組の『How To Survive In + Woods』をリリースしているが、これはニール・ヤングやタイニー・ティムを思わせるジェレミーのファルセット・ヴォイスと、いかにもパンク畑出身らしいエモーショナルなクリスチャンの歌声が奇跡的なバランスで同居した作品で、特に2人のデュエットによる「Silence Is Golden」は、涙なしには聴けない名曲だった。2007年にはルー・バーロウのセントリドーやマウンテン・ゴーツの初期作品で知られるカリフォルニアのシュリンパーから、セカンドの『At Rear House』をリリース。続けてファースト・アルバムもCDでリイシューされているが、この2作はどちらも当時ミネガーのメンバー4人が共同生活を送っていたブルックリンの通称“Rear House”(ミネガーのファースト・アルバム『I Was Born At The Night』のジャケットでその外観を確認することができる)でホーム・レコーディングされたもので、アートワークも対になっていることから、デュオ時代の2部作と言ってもいいだろう。
翌2008年、ウッズはミネガーのフロントマンであるジャーヴィス・タヴェニエルをドラムに迎え、ウッドゥン・ワンド&ザ・ヴァニシング・ヴォイスのメンバーであり、カスタネッツの作品や、グリズリー・ベアーの『Yellow House』にも参加していたテープ・マニピュレーターのG・ルーカス・クレーンも加えた4人組として、テキサスで毎年開催されるインディー・ロック見本市、SXSW出演を含むミニ・ツアーを行うことになる。ところが、このツアーを最後に、新プロジェクトであるリトル・ゴールドの活動に専念するため、クリスチャンがバンドを脱退。残された3人はウッズ・ファミリー・クリープス名義で、文字通りクリーピーなドローン・フォーク集をリリースしている(レコーディング自体は2007年)が、ほどなくヴィヴィアン・ガールズのキャシー・ラモーンとのユニット、ザ・ベイビーズでも活動しているケヴィン・モービーを新ベーシストに加え、再出発し、現在もその4人編成で活動している。