ペンシルバニアのエクスペリメンタルアーティスト、Tom Fecのレコーディング・プロジェクト。エレクトロ・サイケデリック・バンドBlack Moth Super Rainbowでダークでビート中心の分派として登場して以来、TOBACCOは完全に独自のものへと変貌を遂げてきた。過去20年間、Fecの私生活を謎に包まれており、音楽にのみ焦点を当て続けてきた。アンチコンからの2008年に『Fucked Up Friends』を、そして2010年の同レーベルから『Maniac Meat』をリリースし、その後Ghostly INternatinalへと移籍し『Ultima II Massage』、そしてテープデッキにダメージを受けた2016年の『Sweatbox Dynasty』をリリースしてきた。そして再びGhostlyからのリリースとなる最新作が本作「Hot Wet & Sassy」。
TOBACCOはNine Inch Nailsとのツアー、HEALTHやWhite Zombieのリミックス、HBOシリーズ「Silicon Valley」のテーマ曲提供、BeckからAesop Rockまでをプロデュース、2019年にはMalibu Kenとして後者とのコラボアルバムをリリースするなど、多岐に渡る活動をしている。Fecがミュージシャンとしての彼のマークをどこに着地させても不気味だ。Boards of Canadaや初期のDef Jamのレコード、Gary Numan、あるいはパブリックアクセスのテレビや80年代のホラー映画の悪いVHSのダビングなど、体の一部を切り取ったような音が聞こえてくる。あるいは、太陽が爆発して、今まで愛してきたものが溶けてしまうような瞬間も垣間見え、結局、TOBACCOは瞑想音楽を作ろうとしているだけなのかもしれない。カテゴライズ不可能な現代の異才のひとり。