これまで主にソウル系の作品のプロデュースを手掛けてきたエディ・ベザレル。そのエディが地方のレコード・ショップでレコードを見ている時に、ふと、あるアイデアを思いついた。「腕利きのミュージシャンを集めて、素晴らしい歌の数々をカヴァーするプロジェクトをやってみたらどうだろう」。そして、誕生したのがヘッドレス・ヒーローズだった。
思い立ったら吉日。まずエディはプロデューサー/エンジニアとして、レディオヘッドやベックなどのエンジニアやプロデュースを手掛けてきた友人のヒューゴ・ニコルソンに声をかけた。そして、ヒューゴのレコード・コレクションを漁りながらカヴァーする原曲をピックアップ(選曲には二人の友人、デヴィッド・ホルムズも一枚噛んだらしい)。同時にエディはプロジェクトの核となるシンガーを探し始めた。そこでネットを通じて見つけ出したのが、ネヴァダ・シティ出身のシンガー・ソングライター、アリーラ・ダイアンだった。アリーラは03年に自主制作盤『Forest Parade』でデビュー。04年にCD-Rで発表したファースト・アルバム『パイレーツ・ゴスペル』が06年に公式リリースされると、ラフ・トレード・ショップの〈アルバム・オブ・ジ・イヤー〉に選ばれて一躍注目を浴びた。折しも、英米ではフリーク・フォーク・ムーヴメントが巻き起こってきた頃。同郷のジョアンナ・ニューサムとも仲が良かったアリーラもまた、ジョアンナ同様に新世代のフォーク・シンガーとして脚光を浴び始めていた。ラフ・トレードのオーナー、ジャフ・トラヴィスはアリーラを「サンディ・デニーやカレン・ダルトンにもひけをとらないシンガー」と絶賛。彼女とレーベル契約を結び、今年2月には新作『To Be Still』がリリースされたばかりだ。
そんな彼女をバックアップするミュージシャンたちもまた、選りすぐりのメンバーが揃っている。まず、ギター、ベース、オルガンなど様々な楽器をこなし、バンドの中核となったのはジョシュ・キングホッファー。ベックやPJハーヴェイなど、錚々たるアーティストのサポートを務めてきたジョシュは、とりわけジョン・フルシアンテと親交が深く、共作アルバムもリリースしている。またギターのウッディ・ジャクソンは元フレンズ・オブ・ディーン・マルチネスのメンバーで、マニー・マークやヴィンセント・ギャロなどとの共演以外に、デヴィッド・ホルムズのもとで『オーシャンズ』シリーズのサントラにも参加してきた。今回、ストリングス・アレンジを担当したレオ・エイブラハムズもデヴィッド・ホルムズとの仕事が多いが、ブライアン・イーノからニック・ケイヴまで数々の大物たちと共演してきたUK出身のミュージシャン。さらにドラムでベックやR.E.M.が絶大な信頼を置くジョーイ・ワロンカーが参加するなど、おもに西海岸を代表するセッション・ミュージシャンたちが一堂に顔を揃えている。
(日本盤ライナーノーツより抜粋)